脂質異常症とは
どんな病気?
血液中に存在する「脂質」には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸があります。そしてコレステロールは、HDLコレステロール、LDLコレステロールに分けられます。
脂質異常症とは、上記のうちLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、またはHDLコレステロールが少なすぎる状態を指します。
脂質異常症の原因
脂質異常症は、以下のような生活習慣の乱れによって起こる生活習慣病です。
多くの場合、複数の原因が重なることで発症します。
ストレス
精神的・肉体的ストレスが溜まって自律神経が乱れると、交感神経が刺激され血液中の脂質量を上昇させるホルモンが分泌されます。またストレスは、暴飲暴食を招きやすいというリスクも抱えています。
食事
肉の脂身やバター、生クリーム、インスタントラーメンなどに多く含まれる飽和脂肪酸、お菓子や清涼飲料水に多く含まれる砂糖、アルコール、脂っこいものの摂り過ぎは、いずれも脂質異常症の原因となります。
肥満
肥満は、HDLコレステロールを減少させ、脂質異常症のリスクを高めます。
また肥満と関連する運動不足も、脂質異常症の重大なリスク因子となります。
喫煙や飲酒
HDLコレステロールを減少させる喫煙、中性脂肪を増加させる飲酒は、いずれも脂質異常症の原因となる生活習慣です。飲酒はHDLコレステロールを上昇させますが、総合的な作用を考えるとやはりおすすめはできません。
痩せているのに
脂質異常症になるのはなぜ?
「脂質」「コレステロール」「中性脂肪」といった言葉から、“脂質異常症は太っている人がなる病気”というイメージがあるようです。
しかし実際には、食事に偏りがあったり、ストレスが過大であったり、喫煙や過度の飲酒がある場合には、痩せている人でも脂質異常症になることがあります。肥満だけが、脂質異常症を引き起こすわけではないのです。
また脂質異常症で問題になる内臓脂肪は、外見上は皮下脂肪より目立ちません。
普通体型だから、あるいは痩せ体型だから脂質異常症にならないということはありませんので、健康診断などで数値の異常を指摘された場合には、お早めにご相談ください。
脂質異常症の症状と診断
脂質異常症では、ほとんど自覚症状がありません。そのため、気づかないうちに発症している・進行しているというケースが珍しくないのです。
ほとんど無症状でありながら、放置していると動脈硬化は確実に進行します。そして心筋梗塞や脳卒中など、重大な合併症の原因となるところが、脂質異常症を含めた生活習慣病のこわさと言えるでしょう。
脂質異常症の基準値
(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)
空腹時の血液検査において、中性脂肪が150mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満、LDLコレステロールが140ml/dL以上の場合、脂質異常症と診断されます。
また、LDLコレステロールが140ml/dL未満であっても、120~139mg/dLに該当する場合には「境界域」という診断になります。
またその他、年齢・性別・喫煙習慣の有無・家族歴・慢性腎臓病や糖尿病の有無などによって基準値は変わります。
なお当院では、15分で結果が出る血液検査装置を導入しており、当日の結果説明が可能です。
診断の基準値
中性脂肪(TG) | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
---|---|---|
HDL(善玉)コレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
LDL(悪玉)コレステロール | 140ml/dL以上 120~139mg/dL | 高LDLコレステロール血症 境界域LDLコレステロール血症 |
脂質異常症を
放置するとどうなる?
脂質異常症を放置していると、血管の内側にプラークがこびりつき、血液の通り道が狭くなります(動脈硬化)。血管が詰まったり、破れたりするリスクが高くなるのです。
脂質異常症、および動脈硬化自体にはほとんど自覚症状はありません。健康診断などで異常を指摘された場合には、症状の有無に関係なく、お早めに当院にご相談ください。
脂質異常症の合併症リスク
動脈硬化によって、心臓に栄養・酸素が十分に届けられない狭心症、心筋が壊死する心筋梗塞、さらには脳梗塞や脳出血など、重大な合併症のリスクが高まります。
健康・命をおびやかすこれらの合併症を予防するためにも、脂質異常症の早期発見・早期治療が大切になります。
脂質異常症の治療方法
まずは運動療法や食事療法を行い、必要に応じて薬物療法を導入します。
薬物療法を導入してからも、運動療法・食事療法は継続しなければなりません。
運動療法
ウォーキング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が有効です。
特に長く運動から遠ざかっていた人、太っている人は、ケガ、心臓への負担を考え、医師とよく相談した上でメニュー、運動量を決めるようにしてください。
食事療法
食べ過ぎ、飽和脂肪酸や砂糖を多く含む食品の摂り過ぎは避け、栄養バランスの良い食事を意識しましょう。特に食物繊維をしっかり摂ることで、コレステロールの吸収が抑えられます。
アルコールについては、1日あたりビール中瓶1本、日本酒180mlといった摂取の目安量を守りましょう。週に1~2日は、休肝日を作ってください。もちろん、禁酒ができれば理想です。
薬物療法
食事・運動といった生活習慣の改善で効果が不十分である場合、薬物療法を導入します。
LDL(悪玉)コレステロールの値を下げる薬、中性脂肪の値を下げる薬などを用います。
以前はLDLコレステロールを優先して下げることが多かったですが、中性脂肪もしっかり下げることによって、心臓血管疾患などのリスクを減らすことができるという結果も報告されているため、定期的に血液検査を行い、薬物調整を行っていく必要があります。