感染症とは?
感染症とは、ウイルスや細菌、真菌、寄生虫といった病原体が身体に侵入し、何らかの症状を引き起こす病気のことを指します。
病原体が身体に入ったからといって、必ず感染症を発症するわけではありません。病原体の感染力、私たちの身体の免疫力のバランスによって、発症するかどうかが決まります。
感染症の原因となる感染経路
感染経路とは、病原体が私たちの身体に入る経路のことを指します。
主に、以下のような感染経路があります。
飛沫感染
感染者のくしゃみや咳、会話などによって唾液がしぶきとなって放たれ、近くの人が吸い込むという感染経路です。
飛沫感染する病原体としては、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、風しんウイルスなどが挙げられます。
接触感染
感染者の皮膚・粘膜、病原体の付着した手すり・ドアノブに触れた手で、自分の口や鼻を触ることで感染します。
接触感染する病原体としては、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、黄色ブドウ球菌などが挙げられます。
空気感染
感染者の口から飛び出した飛沫中の病原体が、空気の流れに乗って広がり、まわりの人が吸い込むという感染経路です。
空気感染する病原体としては、結核菌、水痘・帯状疱疹ウイルス、麻しんウイルスなどが挙げられます。
経口感染
病原体に汚染された食べ物、水を口から取り入れることで感染します。
経口感染する病原体としては、ノロウイルス、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157)などが挙げられます。
身近な感染症の種類
(季節・ウイルス別)
身近な感染症について、流行しやすい季節ごとにご紹介します。
春から夏に流行りやすい
感染症
春先から夏にかけて流行しやすい感染症についてご紹介します。
おたふくかぜ、麻疹、風疹などは、近年は大人の感染者数が増加しています。
おたふく風邪
2~3週間の潜伏期間ののち、片側または両側の唾液腺の腫れ、発熱などの症状が現れます。感染力は比較的弱く、一度発症するとその後はかかりにくくなります。
麻疹(はしか)
麻しんウイルスの飛沫感染、接触感染、空気感染によって発症します。麻しんウイルスは感染力の強いウイルスです。発熱、鼻水、くしゃみなどの風邪に似た症状、口内の白い斑点などから始まり、数日後には全身に湿疹が現れます。
風疹
風疹ウイルスの感染によって発症します。発熱や発疹、耳の後ろのリンパ節の腫れなどが見られます。大人の場合は関節痛などの症状が加わり、発熱・発疹が出る期間も長くなります。
プール熱
アデノウイルスの感染によって発症します。5~7日の潜伏期間ののち、38℃以上の高熱、のどの痛み、目の充血などの症状が現れます。プールで感染・流行することが多いことからこの名がついていますが、普段の生活中での飛沫感染、接触感染も見られます。
手足口病
コクサッキーウイルスA群などの感染後、3~4日の潜伏期間を経て発症します。口の中・手のひら・足裏に水疱性の湿疹が現れ、しばしば発熱を伴います。ほとんどは数日以内に治まりますが、稀に髄膜炎や脳炎などを合併します。接触感染または飛沫感染します。
ヘルパンギーナ
コクサッキーウイルスA群などの感染後、2~4日の潜伏期間を経て発症します。乳幼児に見られる夏風邪の代表的な感染症です。糞口感染を含む接触感染、飛沫感染が主な感染経路です。突然の高熱、口内の水疱などが見られます。熱性けいれん、脱水症へと重症化することもあります。
秋から冬に流行りやすい
感染症
冬の3大感染症であるインフルエンザ、ノロウイルス感染症、RSウイルス感染症をはじめとする、秋から冬にかけて流行しやすい感染症をご紹介します。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスの感染によって発症します。12月~2月頃に流行のピークを迎える感染症で、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛・筋肉痛、倦怠感、のどの痛み、咳、鼻水などの風邪に似た症状が見られます。風邪と比べると、症状が急激に現れます。
RSウイルス感染症
RSウイルスの感染によって発症します。日本を含め世界中で分布・流行し、2歳までにほぼすべての赤ちゃんが一度は感染します。4~6日の潜伏期間ののち、発熱、鼻水、咳などの症状が現れます。初感染時、乳幼児は重症化しやすく、喘鳴や呼吸困難の症状が加わることもあります。
ノロウイルス感染症
ノロウイルスに汚染された食べ物、あるいは感染者の嘔吐物・便から感染し、発症します。急激な嘔吐、下痢、発熱が見られ、通常は3日程度で回復します。ただし、乳幼児や高齢者は重症化しやすいため注意が必要です。嘔吐物、便の処理についても、感染が広がらないように注意しなければなりません。
ロタウイルス感染症
1~4月頃に流行します。急激な嘔吐、下痢、発熱といったノロウイルス感染症とよく似た症状に加え、白濁した便が見られることがあります。感染者は生後6カ月~3歳くらいの子どもが多くなります。
季節が関係ない感染症
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症
新型コロナウイルスの感染によって起こる感染症です。発熱、倦怠感、頭痛、のどの痛み、咳、鼻水、味覚障害、嗅覚障害などの症状が見られます。主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。
高齢、肥満、慢性肺疾患、糖尿病、心臓病、腎臓病、免疫機能の低下などがある場合、重症化しやすくなります。
感染症の治療方法
細菌を原因とする場合には、抗菌薬を投与します。ただし、細菌性のものであっても医師の判断で抗菌薬を使用しないということもあります。どこでどんな細菌の感染が起こっているか、また患者様のご年齢やお身体の状態によって、抗菌薬の必要性、それと量や使用期間を適切に判断します。
一方のウイルスを原因とする感染症には、抗菌薬が無効であるため、原則として使用しません。発熱などに対する対症療法を行いながら、ウイルスの体外への排出を待ちます。インフルエンザや新型コロナやヘルペスウイルスといった一部のウイルス性感染症に対しては、抗ウイルス薬による治療が有効となる場合がありますが、症状が出てからの来院までの期間が空いてしまうと、薬の効果が期待できない場合がありますので、医師と相談ください。
その他、発熱、下痢、嘔吐といった症状がある場合、脱水症を防ぐため、水分の摂り方などを指導いたします。
感染症予防のポイント
ウイルスや細菌などの病原体による感染症を予防するためのポイントをご紹介します。
- 帰宅時の手洗い、うがい
- 適宜の手指消毒(咳をして口を抑えた時、トイレに行った後、料理・食事の前など)
- マスクの着用
- 小まめな換気
- 室内の湿度調整(50~60%)
- 十分な睡眠
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- 予防接種
家族に感染者が出た場合には、感染者との接触を控える、嘔吐物や便の片づけの際のゴム手袋着用・手洗い・床の消毒なども必要になります。